ついに商品化!「遊ばず働き続ける」飛ばないテントウムシ
野菜づくりにとってアブラムシは大敵
野菜づくりに携わる者にとって害虫アブラムシの問題は決して無視の出来ないテーマです。
大きさは1mm未満、どんな隙間からもいつの間にかやってきて大繁殖し、葉や花の汁を吸い続けます。
放っておくと株自体が枯死したり、病気を媒介したりと厄介な問題を引き起こすので、早期の駆除が必要です。化学農薬についてはかなり優秀なものが出回っていますが、少しでも農薬を抑えたい生産者にとってはなかなか有効な手段が見つかっていないのが現状です。また、アブラムシは世代交代が早く、農薬に対してもある程度耐性を持ってきてしまうということも問題視されてきました。
その福音となるかもしれない新商品がリリースされたというニュースです。
新商品 飛ばないテントウムシ
農業・食品産業技術総合研究機構の近畿中国四国農業研究センター(広島県)が開発。屋内限定の「生物農薬」として登録され、茨城県のメーカー・アグリセクトが6月16日に「テントップ」という商品名で発売を始めました。
「テントップ」には飛ばない性質を持つテントウムシの幼虫が200匹、オガクズとともに入っており、野菜にふりかけると幼虫から成虫になったあとも飛散せずにアブラムシを捕食し続けます。
アブラムシ対策として天敵であるテントウムシを利用すること自体は古くから行われてきましたが、ビニールハウスなどの施設内利用でも飛散してビニールにくっついたまま過ごすなどして実働時間が少ないことが問題視されていました。
そんな経緯で「飛ばずに仕事し続けるテントウムシ」の登場は以前から期待されていました。
飛ばない・飛べないの技術はいくつか発表されていたが・・・
この技術の他にも リボ核酸(RNA)を幼虫に注射することで羽が生成されないようにする技術(名古屋大学 農学研究科 新美輝幸 大出高弘 2009年) や、接着剤を使って羽を固定し飛べなくする技術(千葉県立成田西陵高校 地域生物研究部 2013年)などが発表されていましたが、いずれも製品化には至っておらず、コストや生態系への影響などの問題をクリアして「生物農薬」として登録・商品化されたのは今回がはじめてです。
この技術は、テントウムシの中で飛翔あまりしない個体があることを発見した研究グループが、飛翔しない個体同士の交配を30代ほど続けて安定的に飛ばない個体を生み出すという古典的な品種改良技術を使っています。「飛ばない」という特性は劣勢であるため、自然界にでて普通種と交配した場合、その子供は「飛べるテントウムシ」になるため自然界への悪影響はないと説明されています。
ビニールハウスでの栽培をしている方にとっては家庭菜園でも気軽に使える方法といえコマツナなどの葉物の他、イチゴ・ナスなどの果菜類でも利用方法が農研機構HPにて具体的に紹介されています。
「遊ばず働き続けろ」というのも酷なような気がしますが、化学農薬を使いたくない生産者にとっては注目の商品といえるでしょう。
お気軽にコメントをどうぞ