農業のアイデアやニュースが集まるウェブマガジン

農に関わる学生団体インタビュー第3回 蔵人の会



蔵人の会

 

近年農業系の学生団体が次々と立ち上がっている。その積極的な活動を取材することにより、なぜ今学生団体なのか、将来世代の旗振り役は何を考えているのか、日本の農業はどう変わっていくのか、を考えるのがこの「農に関わる学生団体インタビュー」というコーナーである。

第3回目は、蔵人集団、蔵人の会だ。メンバーは2~4年生合わせて、14名。東京農業大学、立教大学、青山学院大学など所属大学はさまざまだが、メンバーには特殊な参加資格が求められる。

それは「実家に蔵がある」ということだ。100年以上続いている蔵も多く、歴史と伝統の中で生き抜いてきた蔵の跡取りたちが集まっている。今回は2014年から続くこの蔵人の会初代代表である大竹令馬さん(東京農業大学国際食料情報学部4年)にインタビューを行った。

13153311_501006466751915_209584155_n

 

 

〇きっかけは「小遣い稼ぎ」

大竹さんは正直だ。団体の設立経緯を伺ったところ、その答えは全く予想しなかったものだった。なんと「お小遣い稼ぎ」、その一言だった。「とはいえ、他に何かやりたかったんじゃないですか?」と尋ねても、「ただ単にお小遣い稼ぎ」と答えるのみだった。イベントに出てお小遣い稼ぎをしたかったのだけれども、団体にならないと出られないから、作ったという。結果的に、団体を設立したことで、メンバー同士で情報交換をしたり、他の団体と連携したり、イベントに出たりと活動の場を広げられた。メンバーそれぞれが実家の商売を発展させることもできたし、蔵友達をつくることもできた。そんないいこと尽くしの団体を設立したのだ。

〇実家の商売をPRするための学生団体

ミーティングは2週間に1回しかやらない。各々がビジネスと割り切って、現場に立ち続けることを重視している。取扱商品は、メンバーによって様々だ。例えば、味噌や醤油でも、大衆向けのみ商品を販売するメンバーもいれば、自然食品にこだわって販売を行うメンバーもいる。大竹さんの場合は、実家が岐阜県で、大衆向けのお酒や、味噌、醤油、漬物などを扱っている。その中でも、味噌と醤油を東京で販売し、PRを行っている。(以下、大竹さんの実家の蔵の写真)

 

蔵

 

蔵内部

 

イベント出店は、学生団体いろりが主催する「農林漁業学園」、学生団体Favoとコラボした新メンバー歓迎イベント「ふぁぼくら」、東京農大の「収穫祭」などとにかく数をこなすことを意識している。蔵で作る味噌や醤油、お酒などの食品は、調味料でもあるので、他の農業関連の団体とコラボしやすい。徹底的にコラボしていくスタンスで、自分たちでイベントを作っていくことはほぼやらない。ビジョンがあって、それに向かって動くよりは、あくまでも実家の商売を生かすためにこの団体がある、という考え方に基づいている。(以下、農林漁業学園での様子)

 

13153235_501006756751886_2043364897_n

 

 

メンバー同士はそれぞれの商売をPRするためのパートナーシップという関係であり、一緒にスノーボードにいくいわゆる学生団体らしいノリは持ち合わせつつも、色恋沙汰は避けているという。大竹さんいわく「男、女、の他に蔵元っていう性別がありますから。」ということで蔵元である以上それぞれが実家の商売を担っていく立場にあるという割り切りを大事にしているようだ。

 

メディア掲載や、TV出演も多数で、一部ここでご紹介させていただく。

・かもめの本棚(WEB掲載)http://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents_i354.html

・ヒルナンデス(TV出演、蔵人の会HPより引用)http://kurabito.info/

・ユメラボ(TV出演)http://www.yume-lab.jp/play/20160319.html

 

2016年確定済みスケジュール

5月22日もしくら(白藤プロジェクトと連携した新歓イベント)

6月25日、26日リーダーズキャンプ(学生団体いろりの主催するイベント)

※新入生募集中(蔵元の学生に限る)

〇蔵人の会 代表 大竹さんのVISION

3歳のころから、実家の麹風呂に入って家業を手伝ってきた。同年代が遊んでいる中で、働くということに対して、決して前向きな気持ちばかりではなかった。アルバイト経験から、「会社で働いて上から何か言われるより、自分が上に立っておおらかでありたい、その方が性にあっている」と気づいた大竹さん。「後継者は自分しかできない」という想いもあり、実家で働くことを決意した。今考えてもみれば、「親もいいこと言っていたなあ」と感じるようである。蔵人の会を作ってから、他家の事情も知るにつれて、客観的視点が得られた。それが、きっかけで考え方が変化したようだ。大学卒業後は知り合いの漬物屋で働く。漬物屋で修行してから、また、実家に戻るという。「すぐ横で寝られるところがあれば、夜でも働きます。」という大竹さん。仕事にかける強い想いを胸に、活動を続けている。

 

大竹さん

 

 

〇編集後記

大竹さんの言葉はストレートだ。僕はかつて、学生起業家にひたすら会って、お話を伺っていた時期があった。その時に起業家から感じたのは「物事を割り切って考える力」だった。そして、今回大竹さんの言葉が、今まで会ってきた起業家の言葉に重なって聞こえて、はっとした。働く経験を積んでいるからこそ、わかることがある。まして、蔵という特殊な環境に身を置き続けてきたのだ。何でも公開する時代に、伝統が作り上げた神秘が同居していて、働くことを経験しないと土足で入れない世界がある。かなり大人びた印象の職業集団に、一方ならぬ好奇心がわいた。

 

お問い合わせや、その他提案など、学生団体蔵人の会に関してご興味がある方はこちらまでご連絡ください

学生団体蔵人の会:kurabitokurabito@gmail.com

HP:http://kurabito.info/index.html

 

 

〇筆者プロフィール

稲村行真

中央大学法学部4年。古民家鑑定士。モットーは自然に忠実に生きること。オーストラリアと小笠原の生物多様性保全調査、村人が2人しかいない村での宿泊、ブータンでの農業・林業現場視察などを通じて自然に対する関心が深まる。2015年6月に合同会社wip-tyを起業、フェアトレード商品の販売を行った経験がある。そんな中で、現在は農天気.netの編集と共に、古民家を軸とした事業展開を進めている。

1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お気軽にコメントをどうぞ

Your email address will not be published.

*