農に関わる学生団体インタビュー第1回 田畑と森と海でつながる学生団体~いろり~
日本の第一次産業の火種を集結させたまとめ役
田畑と森と海でつながる学生団体
~いろり~
近年農業系の学生団体が次々と立ち上がっている。その積極的な活動を取材することにより、なぜ今学生団体なのか、将来世代の旗振り役は何を考えているのか、日本の農業はどう変わっていくのか、を考える良いきっかけになると考え、この「農に関わる学生団体インタビュー」というコーナーを新設した。
第1回目は、第一次産業の学生団体のまとめ役ともいえる「田畑と森と海でつながる学生団体いろり」(以下いろり)である。朝日新聞、農協新聞、日本農民新聞をはじめとしたメディア掲載や、ラジオ出演等団体の注目度は高く、全国の農家や学生団体とのつながりがある。そこで、5期代表の堀内優花さん(宇都宮大学農学部1年)に理念や活動の起ち上げの経緯、現在及び今後の活動について伺ってきた。活動メンバーは1、2、3年生合わせて10名ほどで、さほど人数的には多くない。しかし、少数のメンバーでもやっていることはかなり革新的で、活発でエネルギーに満ち溢れている。
〇活動の軸となる理念
活動の理念は初代代表の時からまったくぶれていない。「全国の学生とともに日本の第一次産業を盛り上げる」ということである。初代代表の平戸裕馬さんは、47都道府県を旅して、多くの農家さんと出会い、この学生団体いろりの基礎を作り上げた。旅において「農業はダメだ」と日本の農家さんに言われて悔しかったのが一つの要因としてある一方、日本の農業に感動し、大好きな人たちの景色を守りたいという強い思いを抱いた。そこで、学生同士何かできないかと考え、全国の1次産業に関わる学生団体が一致団結すれば、農業を盛り上げることができるのではないかと考え、学生団体いろりが誕生した。学生団体同士知らないことも多く、点在している全国の学生団体がもっと連携したら面白いこともできるし、資金面での悩みなども相談できる。将来世代である学生は消費者でもあり、普段食べているものの裏側を見つめる良いきっかけにもなると考え、活動を開始したとのことである。学生団体が立ち上がった段階で、農林水産省の協力を得たのも、この団体の活発な活動を可能にした要因だろう。
〇活動内容
ここで、学生団体いろりの主要な2つの活動について、触れておく。6月のLeader’s Campと11月JAPAN HARVEST 2015である。
6月のLeader’s Campは、『食』や『第一次産業』に関わる全国の学生が都内に集結し、ワークショップや交流会を通して、これからの食と農林漁業について語り合うというものだ。2015年は『JAPAN HARVESTまで地域で私たちができる活動とは』と題し、参加した東北から九州までの学生が、各団体の強み・弱みを見つめ直しながら議論を交わし、コラボイベントを企画した。コラボした団体ごと競い合い、優勝したのは、学生団体FaVo(東京)と蔵人の会(東京)のチーム「ふぁぼくら」である。野菜×調味料×お酒という食の相乗効果をねらったカフェや見学体験ツアーといった面白い企画を実現した。
次に、11月のJAPAN HARVEST である。世界に誇れるジャパンフードの見本市と銘打ち、実際に食べることを通じてジャパンフードの魅力を体験できるイベントで、農林水産省主催で開催された。このイベント内で学生団体いろりは「食と農林漁業大学生アワード」と「農林漁業学園」の企画運営を行っている。
「食と農林漁業大学生アワード」では、全国の食と第一次産業に関わる大学生が普段の活動をプレゼンテーション形式で発表し、最も優れた団体には農林水産大臣賞が授与される。審査委員には、第一次産業や食に精通されている有識者や経営者の方々が名を連ねている。
また、「農林漁業学園」は、全国から食と農林漁業に関する大学生が集まり、地域の農産物や加工品の販売を通じて、各々の伝えたいことを発信していく場である。自分たちの手で生産から収穫までを行った農産物、民間企業等との連携により開発した加工品など、様々な商品がブースに並ぶ。
年間スケジュールは以下の通りである。
4月移住を応援する雑誌「TURNS」とコラボしたディスカッションイベント
5月泥んこバレー
6月Leader’s Camp
8月~9月地方合宿への参加
11月JAPAN HARVEST
12月~引き継ぎ
〇いろり第5期代表 堀内さんのVISION
小さい頃から農作業が好きで、農業に携わる機会の多かった堀内さん。宇都宮大学では農業経済を学んでいる。農業や食に関する活動を学生の立場から発信したいと考え、学生団体の合同新歓で出会った学生団体いろりに入ることを決めたという。まだ大学1年生。将来は地域のキーパーソンないしキーパーソンを支える人材として活躍できるようになりたいと考えている。
〇編集後記
農業は実業の極みだと思う。農業作業の大変さと泥臭さは、日本の古くから続く伝統的なものづくりの精神に通ずるものがある。しかし、今の若者は簡単便利な世の中で、なかなかこの価値に気付けていない。そんな農業のイメージを若者である自分たちから変えていこうと頑張っている学生団体いろりのキーワードは「巻き込み力」だと思う。まだ大学に入りたての学生でも農家や企業、農水省を巻き込むことで、ワクワクする企画を実現できる。穏やかな雰囲気の堀内さんに秘められた熱意と勇気と行動力に、いろりという団体が今まで受け継いできた強さを感じる。
お問い合わせや、その他提案など、学生団体いろりに関してご興味がある方はこちらまでご連絡ください
学生団体いろり:nouringyoufes@gmail.com
筆者プロフィール
稲村行真
中央大学法学部3年。モットーは「自然に忠実に生きる」こと。オーストラリアや小笠原諸島の生物多様性に興味を持ち、研究を行ったこともある。昨年6月に合同会社wip-tyを設立し、フェアトレード商品の販売を行うが、現在休業中。農家のお手伝いがきっかけで農業に興味を持ち始め、現在農業系の事業立ち上げを計画中。古民家鑑定士としても活動を行っている。
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