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ポイント解説:農林水産省「グロ-バル・フードバリューチェーン戦略」


2014年6月6日、農林水産省が「グロ-バル・フードバリューチェーン戦略」を策定・公表しました。

国際競争を勝ち抜くための産学官を挙げた対応が宣言され、2020年度に我が国の食関連産業(食料品製造業・飲食サービス業)の海外売上高約 5 兆円を目指すとされています。また、世界の食市場が急速に拡大する中で、産学官連携の取組強化により、意欲的な目標として2030年度には海外売上高約20兆円を目指していくとされています。
2010 年度の食品関連業海外売上高は約 2.5 兆円であり、大きな目標数値が掲げられたことは注目すべきです。

「グロ-バル・フードバリューチェーン戦略」のポイントを下記の構成でまとめました。

  • グローバル・フードバリューチェーンの構築とは
  • 日本の食市場収縮と日本の食産業の拡大
  • Made WITH Japan の推進
  • 基本戦略
  • 地域別戦略
  • ハラール食品フードバリューチェーンの構築

グローバル・フードバリューチェーンの構築とは

フードバリューチェーンの構築とは、農林水産物の生産から製造・加工、流通、消費に至る各段階の付加価値を高めながらつなぎあわせることにより、食を基軸とする付加価値の連鎖をつくること、即ち、産地の「こだわり」を消費者につなげていくことです。
製造・加工、流通、小売といったビジネスプロセスを構成するプレーヤーが個別に価値を高めることを目指すのではなく、作ってから消費するまでのビジネスプロセス全体での価値の極大化を目指すものといえます。

日本の食市場収縮と日本の食産業の拡大

少子化が社会問題化していることからも推察できますが、日本は将来的に人口減少が見込まれています。人口が減少に伴って、日本国内の食市場は収縮していくと見込まれています。
一方、世界の食市場は、2009年の340兆円から2020年に680兆円に倍増し、特にアジアは82兆円から229兆円の約3倍に拡大注1)することが予測されています。 日本は、ユネスコ無形文化遺産である日本食といった強みをもっており、この強みを活かして、急速に拡大する世界の食市場を取り込み、日本の食産業の成長を達成しようというのが「グローバル・フードバリューチェーン戦略」の基本的考えとなっています。

Made WITH Japan の推進

「グロ-バル・フードバリューチェーン戦略」には、副題として「~産学官連携による“Made WITH Japan”の推進~」とつけられており、Made WITH Japanがキーワードになっています(Made IN Japanではありません)。
日本で作った日本産(Made IN Japan)を推進して海外展開を目指すのではなく、製造・加工といったバリューチェーンの初期段階から海外展開することも見越して世界の食市場を取り込もうとしている点に注目すべきです。

フードバリューチェーンを構成する食のインフラは、灌漑施設、農業機械、植物工場、食品製造設備、コールドチェーン、物流センター、小売・外食等の流通販売網、道路、電力など多岐にわたり、これらをつなげてパッケージで海外に展開することで大きな経済効果を得ようとしています。フードバリューチェーンを日本国内だけで構築するのではなく、海外で展開しようということが、Made WITH Japanの推進の意味するところです。

基本戦略

フードバリューチェーン構築にあたっては、進出先の生産・流通・消費体制、投資等の規制・制度、食品の規格・基準、海外事業を担う人材の確保、技術、税制、インフラ(コールドチェーン、物流施設、流通販売網等)、資金調達等が課題とされています。
課題を解決し成果をあげるべく、基本戦略として以下の10点が掲げられています。

  • 産学官連携による戦略的対応
  • 我が国と相手国の産学官連携の枠組の構築
  • 経済協力の戦略的活用
  • コールドチェーン等の食のインフラ整備
  • ビジネス投資環境の整備
  • 情報収集体制の強化
  • 人材の育成
  • 技術開発の推進
  • 資金調達の円滑化
  • 関係府省・機関の連携強化と推進体制の整備等

地域別戦略

地域別戦略としては、経協インフラ戦略会議や農林水産物等輸出促進全国協議会等との連携の下、二国間政策対話、官民協議会等の枠組を活用し、モデルとなる取組を重点的に推進する重点地域として以下が掲げられています。

  • ASEAN
  • 中国
  • インド
  • 中東
  • 中南米
  • アフリカ
  • ロシア・中央アジア

なお、地域別構想の中では、ハラール食品の生産・流通・販売のフードバリューチェーンの構築が目を引きます。

ハラール食品フードバリューチェーンの構築

イスラムでは、豚肉を食べることが禁止されていることが有名ですが、その他の食品でも加工・調理に関して遵守すべき作法があります。この作法を遵守した食品がハラール食品です。
ハラール食品市場は約65兆円といわれています。
クアラルンプール、ドバイ等の「ハラール・ハブ」と日本食品の「シンガポール・ハブ」の連携により、日本産のハラール食品・食材の輸出を促進し、併せて、ハラール食品の認証取得を促進しようという戦略です。
ハラール食品の市場規模は大きいですし、日本国内でもハラールに関する話題を目にする機会も増えました。これから力をいれる関係者が増えそうです。

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